【PPL対策シリーズ】NavLogの書き方 前編

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こんにちはShionです。
今回は意外とやることが多くて慣れるまではなかなか時間のかかるNavLogの書き方を前編と後編にかけて解説します。

NavLogの書き方シリーズのお品書き

  • 前編: NavLogの基本情報と事前準備編
  • 後編: 当日記入するもの編

訓練中の方はもちろん、パイロット留学を計画している方の事前学習としても活用ください!
それではこの記事では前編の「NavLogの基本情報と事前準備」について説明します。

NavLogってなに?

Navigation Logの略で、パイロットがフライト前に作成・使用する飛行計画の詳細な記録表のことです。NavLogは飛行ルート、時間、燃料、天候情報などを整理し、安全で効率的な飛行を実現するために欠かせないツールです。

現代ではFore FlightFit Plan Goなどのデバイス上で必要情報を入力すると半自動でNavLogを作成してくれるツールもあります。

NavLogの例 (画像はJeppesenのもの)

NavLogは地域や学校により異なるフォーマットを使っていることが多いです。
そのため当記事はあくまで参考にまでに実際の運用では各学校のルールに沿ってNavLogを制作してください。

しかし訓練ではアナログで作ることで理論と感覚の両面でパイロットとしてあたり前の以下のような知識と技能を習得することができます。

  • HeadingやAir Speed, Altitudeの種類と違いについて
  • 風の強さと方角が燃料や針路にどの程度影響するか
  • 気温や気圧の影響、天候に関する知識
  • エンジン停止などの危機管理のシミュレーション
  • 地形や空域への理解度向上
  • 空中での針路修正

「アナログでこんなん書いてるの前時代的だしやる意味ないだろ」とか思っている人も少なくないかと思いますが、アナログで満足にNavLogを書けない状態で先述のような便利ツールを使うのはタイピング遅いのにハッカー気取りでEnterキーを叩くようなものです恥ずかしいのでやめましょう。(個人の見解です)

Fore FlightFit Plan Goはとても便利なツールですが、これを読んでいる皆さんはアナログのNavLogの書き方を完璧に習得してから使いましょうね!

各セクションの紹介

それでは各セクションの紹介に移ります。
フォーマットには様々ありますが、NavLogは基本的に以下の情報で構成されています。

NavLogの構成要素と出典

  • From: Map, CFS
  • To: Map, CFS
  • Altimeter: MEATR
  • Temperature: Upper Winds and Temperature Forecast (FDs)
  • Alt: Choose an appropriate altitude by Pilot
  • P Alt: E6B
  • TAS: POH
  • CAS: E6B
  • IAS: POH, Airspeed Indicator
  • True Track: Map
  • Wind Velocity: Upper Winds and Temperature Forecast (FDs)
  • True Heading(TH): E6B
  • Var: Map or CFS
  • Magnetic Heading: Compass Card of Aircraft
  • Ground Speed(G/S): E6B
  • Distance: Map
  • Fuel Consumption: POH
  • Time: E6B
  • Fuel: E6B or Calculator

*使用するフォーマットにより多少差異があります。
*太字表記は天候と関係なく事前に埋めることができる情報

急にたくさん出てきて訳わかんないという方、安心してください。
次項でそれぞれ説明します。

ここで頻出するMapやPOH, E6Bですがインターネット上で無料で利用できるリソースがあるので、もしまだ持っていないという方はこちらを利用してください。

  • Map (パイロットが用いる航空図のこと)
  • POH (Pilot Operation Handbookの略で機体ごとの性能などが記されている)
  • E6B (パイロットが用いるフライトコンピューターでデジタルのCX3も有名)

*当記事では1976年式のC172M型のPOHを使用しています。
*記載しているページ数は上記に添付している資料に基づいています。

事前に記入できるものと求め方

それでは実際にそれぞれのセクションの意味と求め方を解説していきます。
なおNavLogの順番とは前後しますが、天候に関係なく埋められる箇所のみ当記事にて説明しそれ以外は後編で取り上げることを予めご了承ください。

From / To

このセクションでは、NavLogのLegを決めていきます。
今回は例としてカナダのBoundary Bay空港(CZBB)からChilliwack空港(CYCW)までNavLogを書いていこうと思います。

左からBoundary Bay空港、Chilliwack空港

空には道路がないのでこのように一直線で向かうことも不可能ではありません。
しかし実際には空域に従ったり空から視認しやすい地形を沿う必要があるためNavLogではいくつかの中継地点を結ぶようにルートを設定します。

ルートを決める時はできるだけ以下のルールに従いましょう。

  • VFR Routeには従う
  • VFR Checkpointを使う
  • 湖や川など判別しやすい地形に沿う
  • 高度をあまり変えずに通過できる場所を選ぶ
  • 空港や高速道路、畑など着陸できるところを付近に確保する
  • 空域に注意する(特にCYDやCYR)
  • Mountain Passなど注意が必要な地形を避ける

上記に則って筆者は以下のようなルートを設定しました。

左からBoundary Bay空港、Cloverdale、Mission Bridge、Chilliwack空港

ルート設定は学校や教官の裁量によりかなり変わるので、既に訓練を始めている方はインストラクターや先輩に確認してもらいましょう。

それでは通るルートを決めたらNavLogに記入していきます。
*実際には地図に実線とDrift Lineを書き込む必要があります (応用編で解説)

Alt (Altitude, 高度)

次に高度を設定していきます。
高度は以下の要素を鑑みて設定しましょう。

  • 不必要に空域を侵していないか
  • 周囲の地形の標高
  • 出発地から到着地までの距離(短いフライトで高高度を選択する必要はない)

高度設定に関しても学校や教官により変わるので、既に訓練を始めている方はインストラクターや先輩に確認してもらいましょう。

筆者は今回は全て2300ftを選択しました。
途中で高度を変更するNavLogや山間部、海を越えるフライトに関しては応用編の記事にて解説します。

それでは高度もNavLogに記載していきます。
上昇するレグに関しては高度の隣に「↗︎」を記載しましょう。

各スピードについて

次に速度を求めていきます。
ここから少しずつ難しくなっていくので気張っていきましょう。

パイロットの使用する速度にはいくつか種類があり、それぞれに役目があります。
私なりの例えを用いましたが、これで理解できない場合はYouTubeなどの解説動画を見てください。

  • IAS: Indicated Air Speed (指示対気速度)
    計器に表示される速さ
  • CAS: Calibrated Airspeed (較正対気速度)
    IASの位置誤差と計器誤差を修正した値
  • TAS: True Air Speed (真対気速度)
    無風状態での速度
  • G/S: Ground Speed (対地速度)
    地上から観測した速度

IAS

IASは計器に表示されるスピードです。
しかし飛行機の計器は普段皆さんの使っている車やバイクのように実際の道路を走るスピードを表示しているわけではありません。

Airspeed Indicatorに表示されているのはあくまでPitot TubeとStatic Portの圧力の差、つまるところ前からの圧力の大きさです (実際には静圧と動圧の差)

つまり地上で例えると同じIASを表示させるにはお腹に新聞紙を開いてギリギリ落ちないように歩き続けるイメージです。

水の中で歩いていたときはお腹に張り付かせられていた新聞紙も、そのままの出力で陸に上がると落ちてしまうイメージで、流体の密度が下がると同じIASを維持できなくなります。

察しの良い方は気付いたかと思いますが、IASを維持するために必要な出力は上空だと空気の密度により変化します。

CAS

CASはPOHの離陸速度の説明などに用いられるスピードで、IASを補正し実際の空力的な対気速度にしたものという説明が主流です。
しかし実際の空力的スピードとイメージすると分かりやすいかと思います。

IASはPitot TubeとStatic Portの圧力の差で計測されますが実際に飛行機が直面している対気速度とIASには誤差があります。

この誤差はPitot Tube取り付け位置などにより発生するもので機体ごとに決まっています。

極端な例だとプロペラの真後ろにPitot Tubeをつけてしまうとプロペラからのダウンウォッシュ(風)で狂った値が出てしまいますよね。
*零戦やヘリ、現代の旅客機でPitot Tubeの位置を見比べてみるとそれぞれエンジンや空力の影響の少ない位置に取り付けられていることがわかります。

影響の少ない場所に設置しているとはいえ多少影響は出てしまうので、機体ごとにC172Mだと「IAS-2kts=CAS」など決まっているのです。

TAS

TASは周りの空気と比べて飛行機がどれだけ速く進んでるかの値です。

先ほどのIASで使った水中から陸上に出た時に新聞紙を維持できなかった例ですが、新聞紙が落ちてしまったとしても実際にはその人は歩いているわけです。

地上に出ても新聞紙を落としたくない場合は歩くスピードを早めて前からの圧力を足す必要があります。

つまり上空で同じIASを保ちながら上昇するには出力を加えてTASをどんどん上げる必要があります。

気圧が下がるにつれIASとTASの差がどんどん大きくなることから、NavLogや航空管制ではほとんどの場合でTASが使われます。

G/S

Ground Speedは地上から見た飛行機の速さです。

簡単に言うと動く歩道を使っているとしてその人が歩く速さがTAS、外の人から見た歩いている人の速さがG/Sとなります。

同じスピードで歩いているとしても動く歩道を順走した場合は速く、逆走したら遅くなりますよね。

空中ではこの動く歩道は風で、追い風なら同じTASでもG/Sは早く、向かい風なら遅くなります。

それぞれの説明はこれぐらいにして、NavLogで用いるのはTASになります。

TASは高度と出力 (172の場合はRPM) と気温によって変わるので、まだ選んでいない出力を選択する必要があります。

Cessna 172Mの例

使用する出力を決めるにはPerformanceセクションのRange(5-17)のページを参照します。

基本的には既に決めている高度で最もRangeが長い出力を選択します。

今回の場合は2300ftなので55%を選択します

使用する出力を決めたら次にCruise Performance(5-16)でTAS(KTAS)を探します。

なおTASと同時にGPH (Consumption: 燃費)と出力(C172ではRPM)が出ます。

今回は先ほど決めた55%に近い58%を選択するとTASは101, 燃費は6.7gal/h, RPMは2300と算出されました。

*Standard Temperature is 15°C at sea level pressure altitude(1-7)

それではTASの101とRPMの2300と燃費の6.7をNavLogに記入しましょう

AltitudeとRPMが同じ2300だが別物なので注意

True Track / Distance

ここでは先に今後用いられる方位関係を整理していきます。

方位について

  • TT: True Track
    地図上の進行方向
  • TH: True Heading
    風の影響を考慮した実際に進むべき地図上の方角
  • MT: Magnetic Track
    磁北と真北の差を考慮した磁気上の進行方向
  • MH: Magnetic Heading
    風の影響を考慮した実際に進むべき磁気的な方角
  • CH: Compass Heading
    機体ごとの個体差も考慮した実際に進むべき計器に表示される方角

True Trackから最終的にCompass Headingを求めたい

前提条件として飛行機に搭載されている計器の北は磁北を指します。
しかしながら地図に示されている北は真北なので地図の方角から計器で表示される実際に進むべき方角を求めるには以下の要素を考慮する必要があります。

  • 真北と磁北の差
  • 機体ごとの計器の誤差

これらの誤差を順に計算すると計器の方角に進むだけで地図上の目的地に到達できるような角度(Heading)を求めることができます。

AEROLINKでは事前に少しでも計算を進められるようにTT, MT, MH, CHの順にしてありますがNavLogによってはTT, TH, MH, CHの順で計算する場合もあります。

風の影響を計算する前後の差で最終的なCHは変わりませんので安心してください。

TrackとHeadingは「それぞれ飛行機の向いている方角」と「風の影響を受けて実際に進む針路」という違いがありますが、ここさえ理解すれば難しくありません。

風を考慮していない風を考慮している
真北 (地図通り)True TrackTrue Heading
磁北 (計器通り)Magnetic TrackMagnetic Heading
True TrackからMagnetic Headingを計算する途中でTHを用いるかMTを用いるかは正誤に関係ない

それでは分度器と定規と地図を用いてTrue TrackとDistanceを計測しましょう。

定規は縮尺と単位を誤らないようにnm(ノーティカルマイル)を必ず使用しましょう。

またAltitudeで「↗︎」を記入した行はDistanceのマスを3つに分割して、一番下に記載してください。
この理由については後半で説明いたします。

余談ですが縮尺が不安な方は地図の縦軸の目盛りで確認することができます。
そしてこの技術はDiversionの課題でフライトテストでも使います。

それでは記入後のNavLogはこちらです。

Var (Variation, 真北と磁北の差)

事前に埋めることができる最後の数字はVariationです。

ここでは真北と磁北の差(Variation)を使ってTrue TrackをMagnetic Trackに直す計算を行います。
これは非常に簡単で、TTにCFSやMapに記載されているVariationの数字を加えることで求めることができます。

Variation

CFSの場合

Canadian Flight Supplementにはそれぞれの空港のREFの欄にVariationが記載されています。

しかしCFSの表記のVarは計測から時間が経っているものが多いのでMapの測定年と比べてできるだけ最近のものをNavLogに用いるようにしてください。

Mapの場合

MapではVarは地図上で破線で表現されています。

遠目で斜めの線を探すことが見つけるコツです。

Eはマイナスなので、今回の例だとTrue Trackから16を引くことでMTを求めることができます。

AEROLINKのNavLogは青枠に算出方法を記載している親切設計です。

Headingを求めるには風の情報が必要なので事前に埋めることができません。
そのため後編にて解説します。

長い文章でしたがお付き合いいただきありがとうございました。
後編ではついにNavLogが完成しますのでお楽しみに!

ちなみに今回使用しているAEROLINKのNavLogはSlackコミュニティ参加者に無料で配布しています。
この機会に是非コミュニティへの参加をご検討ください。

AEROLINKのコミュニティに
是非ご参加ください

  • 豊富な経験を持つ教官が多数在籍
  • 日米加に加えヨーロッパの訓練生も
  • パイロット同士の交流や留学前の情報集めに

参考資料

Canada, T. (2016, June 2). VFR Navigation Progress Test Guide — Aeroplane – TP 13779. Transport Canada. https://tc.canada.ca/en/aviation/publications/vfr-navigation-progress-test-guide-aeroplane-tp-13779

Cessna. (1976). Cessna Skyhawk Pilot Operation Handbook. https://www.cpaviation.com/images/downloads/Cessna%20172M.pdf


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